旦那が浮気(不倫)したときの慰謝料(離婚)の相場は?を徹底解説します。

1 どこからが浮気(不倫)になりますか?

ご相談やご依頼をお受けする中で、よくある質問です。
二人きりで食事に行ったら浮気、手をつなぐ・キスをしたら浮気、SEX(性交渉)をしたら浮気、好きになったら浮気・・・
人によっては、浮気の基準(倫理観)が様々です。
しかし、実は法律上、婚姻関係にある配偶者(旦那さん)の浮気(不倫)が違法かどうかについては、このように定められております。

第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。

では、「不貞な行為」という言葉が意味するものは何でしょうか。
判例は、「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう」と定義しております(最判昭和48年11月15日民集27巻10号1323頁)。
つまり、性的関係、すなわち、SEX(姦通)をすれば、「不貞な行為」にあたり、違法な浮気(不倫)ということになります。反対に、単に男女二人だけで食事に行くことや身体の接触なく仲良くしているたけという場合には、不貞には当たりません。そのため、性的関係があることが必要です。
性的関係の期間や回数はたった一度でも、不貞行為になると考えられます。

2 浮気(不倫)の慰謝料はいくら請求できますか?

不倫慰謝料と言った場合に、配偶者に対する請求と、不倫相手に対する請求とがあります。配偶者に対する請求について、離婚するときの「離婚慰謝料」として不倫慰謝料と差異が生じることがあります。ここでは、不倫相手に対する請求を不倫慰謝料とし、ご説明させていただきます。

まず、請求金額については、慰謝料が“心の苦痛”に対する金銭評価を意味しますので、明確にあなたの精神的苦痛はいくらです、という計測機があるわけではありません。そのため、いくらの慰謝料を請求するかどうかが問題になりますが、第一次的には、あなた自身の気持ち次第ということになります。

もっとも、私の気持ちはとても傷付いたから、1000万円、1億円、と言いたいところでしょうが、残念ながら、慰謝料には裁判例の集積に基づく相場感というものがございます。つまり、いくらを請求することはできても、裁判所により認容される金額には限界があります。特に、「損害」の考え方について、日本の裁判所は、懲罰的・制裁的な損害を認めません。そのため、多額の慰謝料を認めないのが現状です。

では、どのくらいの金額を想定すればよいでしょうか。
結論から申しますと、慰謝料としては、300万円程度が請求額の上限水準と考えられます。裁判例では、50万円程度のものから300万円程度のものまで幅広く分布しており、不倫相手との子をもうけるケース、長期間の裏切り行為が続いているケース、離婚に至っているケースなどでは、増額要素になります。

実際に民事裁判を経験している弁護士の感覚としては、裁判官は、立証が乏しいケースでは50万円程度、証拠がはっきりしているが離婚等には至らず特に悪質とまでは言えないケースでは150万円程度を基準とし、悪質な事情があれば、金額が上乗せされていくイメージを持っております。特に、不倫相手との子を作ったというケースでは、裁判官の印象がグッと悪くなった瞬間を垣間見たケースがあります。また、離婚まで至った場合には、別居しているだけという場合と比べて、その被害の程度が大きい(家庭が崩壊したといえる)ため、増額要素になります。

ところで、請求方法には、交渉と訴訟とがありますが、弁護士による交渉では、100万円から300万円程度の慰謝料を受け取れる場合が少なくありませんが、相手方の資力が客観的に乏しい場合には、その後のリスクを踏まえ、70万円程度になるケースもあります。

3 重要な浮気(不倫)の証拠について解説します!

「女性の勘」は鋭いといわれております。
もっとも、法廷で不貞を立証するためには、「女性の勘」では足りません。
裁判官をうなずかせるための、客観的な証拠が重要となります。
ところが、性的関係の場面を撮影している映像があるという特殊な場面でもない限り、性的関係そのものを示す証拠までは存在しないことがほとんどです。
そのため、探偵による調査報告書により身体的接触(キス、手をつなぐ等)、不貞を示すLINEやメールやメッセージや手紙等のやりとりを示す証拠、ラブホテルや食事をしたときの領収証やクレジットカード明細などから、間接的に立証を試みることになります。
中でも、身体的接触を示す写真、LINEの生々しいやりとり、ラブホテルの出入り等を示す証拠があれば、かなり有効です。なおかつ、これらの証拠が複数揃っていると、有効性が極めて高まります。その理由は単純です。社会常識的にみて、男女の関係にあると推認しやすいからです。

人間は、自分に不利なことは認めたくないものです。しかし、客観的に明らかな証拠を示された場合には、“事実として認めざるを得ない”という状況に持ち込むことが可能です。そこまで持ち込めば、相手方は、認めた上で、謝罪するか、慰謝料を支払うかという選択肢にならざるを得ないことから、解決に結びつきやすくなります。
中には、開き直る人もおり、その時は、裁判で決着をつけることになりますが、証拠が動かし難いのに、不合理な言い訳をしていると、かえって裁判官の心証を悪くしますので、慰謝料が増額されることさえ想定できるでしょう。

不貞行為の立証について、限界事例として有名な裁判例としては、以下の二つがあります。いずれも不倫を認めたケースです。

・夫が女性と頻繁に外出し、帰宅も遅く、翌朝まで帰宅しなかった日があったことや、友人間にも二人の関係がうわさになっていたことなどから、「単なる友人の域を超えて性的関係ありと推認すべき」とし、不貞を認定した事例(横浜地判昭和39年9月2日)

・妻がアパートの一室に男性を連れ込んで鍵をかけて二人でおり、夫がノックをしてもすぐに空けなかったこと、示談交渉の席で不倫関係を明確に否定しなかったことから、「通常の交際の範囲を超えた深い男女関係にあったと推認」し、不貞行為を認めた事例(東京地判昭和47年3月18日)

以上はかなり古い判例ですので、注意が必要です。
現代社会では、スマホは当たり前、様々なSNSもあり、証拠は残りやすい社会といえます。証拠の有無と内容が大きく交渉に影響を及ぼしますので、どのような証拠が用意できるか、注意深く観察し、準備をされることをおすすめいたします。


■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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