はじめに
不貞行為について慰謝料を請求する場合、最も重要なのは証拠です。
裁判所は証拠に基づき判断します。証拠がなければ、不貞行為の事実を認定してくれません。そのため、しっかりと証拠を集めていただく必要があります。
不貞行為について直接相手に問い詰めたり、弁護士から内容証明郵便が届いてしまったりすると相手も警戒して、それ以降証拠を得られなくなります。
そのため、必ず慰謝料を請求する前に証拠を収集する必要があります。
具体的な証拠としては、以下のようなものが必要になります。
1 探偵事務所などの調査報告書
一番詳細な証拠を得られる可能性が高いものです。
例えば、配偶者が不貞相手とラブホテルに入って、そこから出てくる写真などであれば、決定的です。
しかし一方で、探偵事務所に支払う費用は決して安くありません。
調査に要した時間・日数及び人員など、様々な要素によって費用は異なりますが、少なくとも数十万円程度、場合によっては数百万円になるという印象です。しかもその結果空振りに終わることもあります。
また、仮に決定的な証拠を得られたとしても不貞行為により得る慰謝料金額が、必ずしも調査費用を超えるとも限りません。
加えて、一口に探偵事務所といっても様々であり、なかには必ずしも信頼のおけない業者がいるのも事実です。
当事務所では、お客様からのお求めがあれば、良心的な探偵事務所をご紹介しています。
2 携帯電話等のLINEやメール
配偶者と不貞相手との間で、LINEやメールのやりとりをしているケースは多いです。
実際、裁判などにおいても、LINEやメールのやりとりが証拠として提出されることも多くあります。
しかし、そのようなLINEやメールを不貞の証拠とするためには、その内容が重要です。
不貞行為=性行為があったことを前提とするようなやりとりがなされている必要があります。
このようなLINEやメールは、携帯電話の画面を写真で撮っておいたり、自分の携帯電話などに転送したりして、証拠化するようにしましょう。
なお、いつ、誰から誰に送ったのか明らかにする必要がありますので、やりとりした年月日と、送受信相手が分かるようにしておくべきです。
携帯電話に愛称などで登録されている場合には、やりとりの相手が、問題となっている不貞相手であることを特定しなければなりません。
そこで、電話帳やメッセージ内のやりとりの中などで、その送受信相手の本名や住所など個人が特定できる情報が記録されていれば、そのような情報もあわせて証拠としてとっておくことがポイントです。
3 配偶者の証言の証拠化
配偶者に問い詰めたときに、自ら不貞行為の事実を認めることがあります。
しかし、そのときは認めたとしても、いざ裁判などとなれば、大抵の場合「そんなことは言っていない」などと主張してくるケースが多いです。
そこで、そのような言った言わないを防ぐため、配偶者の証言を録音しておくことが肝要です。
録音する内容としては、単に「浮気しました」では足りません。
できるかぎり具体的な内容を録音してください。
不貞相手の情報(住所、氏名、年齢、職業、既婚未婚の別など)以外にも、いつどんなきっかけで知り合ったのか、はじめて性交渉をしたのはいつか、その後どれくらいの頻度で会ったり、どこで性交渉をしていたのか、などを押さえておく必要があります。
4 写真・動画
携帯電話などに保管されている場合があります。
中には、配偶者と不貞相手とが性交渉を行っている様子そのものを撮影した写真や動画が保存されている場合もあります。
また、不倫相手が旅館やホテルで同宿していることが分かる写真や動画などが保存されている場合もあります。
そのような写真は、不貞行為の事実を示す極めて強い証拠になりますので、自分の携帯電話などに転送したり、写真を表示した画面を写真撮影したりするなどして、保管しておくようにすべきです。
これに対し、二人きりではなく、複数名で食事している写真などは、単に交流があったことを示すものにすぎませんので、それだけでは不貞行為の証拠にはなりません。
5 領収書
配偶者がラブホテルの領収書や、産婦人科の領収書を財布やカバンに入れたまま、あるいはゴミ箱に捨てているケースがあります。
実際、そのような証拠がきっかけで、不貞を立証できたケースもあります。
ラブホテルの領収書や、産婦人科の領収書などを見つけたら保存しておきましょう。
6 SNSなどのやり取り
LINEやメールという形ではなく、フェイスブックやツイッターなどのSNS上のやり取りやその中の写真などが不貞行為の証拠となることもあります。
特に、フェイスブックのアカウントは実名であることがほとんどですので、不貞相手も特定しやすくなります。
ただし必ずしも不特定多数の人に対して広く公開されているものではなく、公開範囲が限定されている場合も多いです。
その場合は、公開対象の方と交流があれば、その方から投稿内容を知ることも可能です。
おわりに
不貞行為の立証に必要な証拠については、必ずしも上記に挙げたものに限られるというわけではなく、具体的なケースに応じて変わってきます。
そのため、今お持ちの証拠がどうか、または今後どのように証拠をとればよいかなど、弁護士にご相談ください。