不貞をされてしまったらどうしたらよい?慰謝料を請求するなら気を付けるべきポイントは?
不貞をされてしまったらどうしたらよい?慰謝料を請求するなら気を付けるべきポイントは?

配偶者の不貞を知ってしまったとき、どのように対応したらよいのでしょうか。そもそもどのような証拠が、どの程度用意できればよいのでしょう。不貞をされてしまったことで慰謝料請求をしたいという場合の初動から、慰謝料が決まったとのことまで注意すべきポイントについて説明します。

不貞をしたことの責任とは何か?法的責任を追及できる場合とは?どうやって責任を追及できる?

そもそも不貞は何故許されないのか

そもそも不貞は何故許されないのか

既婚者が不貞をした際、その配偶者は当該不貞行為をした配偶者やその不貞相手に対して慰謝料請求することが考えられます。

そもそも不貞行為が何故「不法行為」とされているかというと、不貞行為は「婚姻共同生活の平和の維持を侵害」する行為であるからとされています。

不貞行為の慰謝料について

慰謝料の認定額について

慰謝料の認定額について

不貞慰謝料は多くの裁判で争われていますが、その認容額が高くなるのは

・不貞関係の継続期間

・不貞行為の頻度

・婚姻期間の長さ

・夫婦間の未成熟子の存在

・不貞行為が婚姻関係に影響を与えたか

・不貞行為による配偶者への被害の程度

・不貞相手の言動の悪質性

・不貞をした配偶者の不貞行為における責任の大きさ

といった要素を踏まえ、より責任が重いといえる場合です。

責任の主体は?

不貞の慰謝料を支払うべき主体は、不貞をしてしまった配偶者はもちろんのこと、その不貞相手もなりえるものです。不貞配偶者と不貞相手との責任は共同不法行為・不真正連帯債務という特別な連帯責任で、不貞配偶者あるいは不貞相手のどちらかが慰謝料を支払ったとすると、もう一方の主体への責任も果たされたことになります。

ただし、平成31年2月19日付最高裁判例では

「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者(不貞相手)は、(不貞行為によって当該夫婦が)離婚するに至ったとしても、夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うのは、意図して離婚に至らしめたなど、例外的な場合のみ」

と述べて、不貞相手が「離婚に至ったことについて」の慰謝料の支払義務を負うのは例外的な場合だとしました。不貞相手は「不貞行為をしたこと」を理由に不法行為責任を負うべき場合はあるのですが、それによって「離婚に至った」という部分にまでは責任追及できない、ということです。

したがって、「不貞行為をしたことそのもの」について慰謝料を払った後に、結局夫婦が離婚に至ることになったとしても、「離婚した」という結果部分については不貞相手には慰謝料をさらに貰うということは原則できません。

慰謝料を請求する流れについて

(1) 手段 

慰謝料を請求する流れについて

ア 協議

まず、不貞慰謝料の請求として第一には協議するという方法が考えられます。その場合の一般的な流れは、

①相手方への通知(請求)→②相手方との協議→③合意成立/不成立

というものです。

協議して誓約書等を書かせ、「慰謝料としていくら支払うべきか」という当事者の合意が成立している場合、原則的にはその合意内容を裁判所も認める傾向にあるようです。 ただし、「高額に過ぎる」と後に有効性が争われる可能性もあるので注意が必要です。

協議の内容を反故にされたときに備え、後述の公正証書で作成すれば安心だといえるでしょう。

イ 調停

協議でも上手く合意ができない場合は、「調停」という方法もあります。そこでは「誰を」相手方にするかという問題が最初に出てきます。

・不貞相手だけ

・配偶者だけ

・不貞相手及び配偶者

というバリエーションが考えられ、不貞相手だけであれば、家庭裁判所の家事調停ではなく、簡易裁判所における民事調停でも可能です。

調停はいつ開催されるのかということが心配な方もいるかもしれませんが、裁判所という場所でやるため、平日・日中の裁判所の開庁時間のみとなります。

「第三者に入ってもらい話し合いをしたいが、平日は話し合いが出来ない」というときは、弁護士に間に入ってもらう手続もあります。これは各地の弁護士会で「示談あっせん手続」として設けられているかと思いますので、検討してみてください。

ウ 訴訟

協議も調停も上手くいかない、ということであれば最終的には訴訟という方法が考えらえます。配偶者に対する離婚訴訟に、関連請求として不貞相手を被告とする慰謝料請求の訴訟をあわせて提起することも可能です。

訴訟では何を主張・立証することになるのかというと、

・不貞行為の有無

・故意・過失(既婚者であること・婚姻関係が破綻していないこと)

・不貞行為による損害

・因果関係 

という各要素になります。

(2) 証拠

(2) 証拠

具体的にはどのような証拠があると良いか、例を挙げます。

例)写真

録音・録画

探偵等の調査報告書

妊娠などに関する証拠

クレジットカードの利用明細・領収書等

メール

SNSなど

日記・スケジュール帳

GPS

誓約書

ラブホテルのサービス券など

その他

どの程度の言動などが認められれば、「不貞行為」として責任追及できるかということですが、要するに、配偶者と不貞相手とされる者とが「性的関係を持ったこと」を証明できるかということなので、「お付き合いがあった」とされる配偶者などの証言がある程度や、自宅の出入りなどがあり、数時間の滞在、ハートマークの絵文字付きのメール送信などが認められるが、不貞関係があったという客観的な証拠はないという程度だとすると立証できたとは言い難いかもしれません。

また、配偶者が不貞相手とされる者の臀部や腰部手を回したり、手をつないだりしていた場合も、「性的な関係」とまでは認定してもらえない可能性があります。

ラブホテルに出入りし、一緒に出てきたなどという場合は、責任を否定するのも難しい、固い証拠があるといえそうです。

それでは、証拠を得るために不貞配偶者のパソコンや携帯電話などから勝手に個人情報などのデータを調べ出したり、他人の建物に無断で侵入してデータを得たりすることは許されるでしょうか。

法に触れるような不正ログイン等、著しく反社会的な手段によって収集されたものなどの場合、証拠能力が否定される場合がありうるので注意が必要です。

時効

「損害及び被害を知った時(被害者が加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時)」から3年※という一定期間の経過により消滅時効が成立し、相手方は法的な請求に対して自身の責任を否定することができてしまいます。

ただし、「不貞を疑うようなことがあった」というだけの時点では「損害を知った時」には当たらないとされているので、損害そのものと損害賠償請求が可能な程度に加害者の住所氏名を知ったといえるかが問題となります。

どうやって決まった慰謝料を回収するか

どうやって決まった慰謝料を回収するか

(1) 支払義務がどのような方法で定められているか

協議書、合意書などの形で約束を決めていた場合、約束どおりの支払がなくても、直ちに強制的回収はできません。

これに対し、調停調書、判決書、(執行受諾文言付き)公正証書といった形での約束・定めであれば、支払いがなければ、強制的回収が可能になっています。

(2) 手続について

 国家機関が関与して、債権者の給付請求権の内容を強制的に実現する制度として差押などの強制執行手続があります。

支払義務者が約束を反故にしているが、強制執行しようにも、その者の財産が分からないときは、そもそも強制執行の手続ができません。しかし、勤務先・預貯金口座などの所在が分かっていれば、給与などを抑えることにより強制的に慰謝料を回収することができます。

相手の財産について何も分からないときは「財産開示」や「情報取得手続」と言った 裁判所を通じて財産を調べる手続もあるので検討してみてください。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 相川 一ゑ

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