紛争の内容
自営業をしている男性Aさんは、会社員をしている妻Bと結婚生活20年目を迎え、高校生と中学生の娘二人の子にも恵まれていました。ところが、3年前から妻Bが職場の男性Cと不貞関係を持つようになり、外泊をしたり、激しい浪費をするようになりました。Aさんは、妻Bが男性Cに「いつ結婚するのか」などといった内容の手紙を書いているのを見つけてしまい、妻Bに不貞しているのではないかと問い詰めたところ、妻Bはあっさりと不貞を認めました。そこで、Aさんは男性Cに妻Bと別れること及び謝罪を求めましたが、男性Cは全く不貞関係を認めず、慰謝料の支払いを拒否しました。Aさんが妻Bに、男性Cが不貞を否認したことを伝えると、妻Bは男性Cの子を1年前に妊娠し、堕胎までしていたことを告白し、堕胎同意書の写しもAさんに開示して、「Cが不貞行為を否定するのはおかしい」と正直に話しました。しかし、Aさんがいくら男性Cに連絡しても、「慰謝料は支払わない」の一点張りで、やむなくAさんは弁護士に交渉を依頼することになりました。
交渉・調停・訴訟などの経過
依頼を受けた弁護士からは、男性Cに不貞の慰謝料の支払いを求める通知を出しましたが、C自身も弁護士を立ててきました。Cの弁護士は、不貞を認めざるを得ないと考えたのか、慰謝料を支払うことには応じるとしましたが、その金額は50万円で、しかも毎月1万円ずつの分割払いとするという提案しか出されなかったため、Aさんは納得できず、Cを提訴することにしました。
訴訟移行後は、裁判所も男性Cが妻Bを妊娠させたこと、さらに堕胎後もBC間の交際が続いていたことなどを踏まえ、裁判所からはCの慰謝料支払いが50万円では到底足りないことを前提に、和解勧試がなされました。
本事例の結末
結果として、Cは150万円の慰謝料を、一時金として50万円一括で、残金を毎月3万円の分割で支払うことで承諾し、和解が成立することとなりました。
本事例に学ぶこと
不貞行為の証拠が明らかに存在したとしても、慰謝料の支払いに応じない者もいるため、早期解決を目指すならば不貞慰謝料請求の交渉で終わらせるという選択肢もありますが、相当の譲歩を免れない場合もあります。それに応じることができないのであれば、早めに訴訟提起とし、訴訟上の和解ないし判決にて決着をつけるということも合理性があると感じました。