紛争の内容
依頼者の配偶者は、職場の同僚と不貞行為を行っており、酷く心を病んでしまいました。
依頼者は、配偶者から何とか不貞相手の名前・電話番号だけ情報を得ることができたため、依頼者自ら不貞相手に対し、携帯電話番号ショートメールを送信しました。しかし、不貞相手はこれを無視し、不貞慰謝料請求をしようにも、どうにもならない状況となってしまいました。
そこで、依頼者は弁護士に依頼するに至りました。
交渉・調停・訴訟などの経過
不貞相手の住所が分からないため、依頼者は相手の職場に乗り込んでいって直接話をしようとしていると話をしてくれました。そこで、弁護士として、そのようなことをすると、依頼者が反対に法的責任を追及されるおそれがあるため絶対にやめること、弁護士に依頼するのだからあとは全て弁護士に任せるよう説得し、ひとまずは落ち着いていただきました。
相手方の住所が分からない以上、相手方の職場に慰謝料請求の書面を送ることを考えました。しかし、もし相手方の会社の他の従業員等が中身を見てしまった場合、名誉毀損にもなりかねないため、職場への郵送を躊躇していました。ただ、「連絡をお待ちしています」という内容にしても、法律事務所の弁護士からの手紙が届く時点で、無用なトラブルが起きるおそれもありました。
そこで、直接相手方に電話をし、「相手方のために」職場に書面を送りたくないので、書面を送っても差し支えのない住所地を聞き出すことができました。
もっとも、電話で話しをすることができたため、書面でのやり取りをするのではなく、直接電話での交渉をすることにしました。
電話では、緩急を付けながらも、出来る限り相手方の話を聞いてあげることにしました。毎回1時間もの長い時間、6ヶ月にわたり話をしていく中で、相手方は段々と心を開いてくれるようになりました。そして、依頼者の窮状を丁寧に説明し、段々と理解していただくことができました。
本事例の結末
最終的に、相手方は、弁護士が提示した330万円に対し、300万円を支払うことで合意をし、実際に支払ってもらうことができました。さらに、依頼者の配偶者に求償権行使をしないことも確約していただくことができました。
本事例に学ぶこと
弁護士の交渉においては、理路整然と法律論を述べ、冷静に端的に交渉を行っていくことが通常です。しかし、結局は人間相手なのですから、感情に働きかけることで、本件のようにかえって有利な結果をもたらすことも可能です。
本来であれば、依頼者の相手方は敵です。しかし、あえて相手方の言い分を丁寧に聞いてあげることで、依頼者の弁護士であるにもかかわらず、話をしてくれるようになります。本音を聞き出すこと、実際の生活実態を聞き出すことで、現実的な解決方法を知ることもできます。
私は大学の学部時代心理学を専攻しており、一般的な弁護士としてのやり方に加え、心理学的・カウンセリング的アプローチを使って交渉を進めています。結果として、訴訟までいかず、交渉での早期の現実的な解決に繋がることが多いようにも感じています。
このような独特な交渉方法に興味をお持ちの方は、是非とも一度相談いただければと思います。